#92 タイニーハウスの暮らしについて

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今回は、タイニーハウス(小さな家) を紹介し続ける若い青年2人のユニット“YADOKARI“を取材しました。
彼らのWebサイト「未来住まい方会議」は2012年にスタート。日本はもとより世界の小さな家、移動する家についての記事を毎日あげ、すでに4000を超える記事が掲載されています。世界的なムーブメントになりつつある小さな家は、日本でも注目されつつあります。特にミニマリストや断捨離といったキーワードとも重なり日本人のミニマルな美意識に重なっていくところもあります。そうした中で今やこの二人の活動はそうしたムーブメントを後押しする大きな力となっています。

 

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小さな家を積極的な理由でもつことは今まであった価値観とは反対側にあります。昨今は多くの人が、成熟時代に入ったことを意識し、生き方を模索している時代とも言えます。大きいことや豪華であること、ものをたくさんもつこと、そうした今までの豊かさの指標、経済成長の価値観を疑いはじめているとも言えます。成長しない時代の豊かさとは何かを探しているのかもしれません。

 

彼らは活動を振りかえって、次のように言っていました。「この構想は、所得が低くなっていく日本で、豊かな暮らしをするためには家にかける費用を抑え、その分、そのお金をもっと暮らしを楽しむために使うべきだという考えからスタートしました。その可能性を伝えるために、小さな家でも素敵な暮らしをしている人々を紹介していこうと考えたのです。しかしやってみるとこうした提案に共感した人は、当初考えていた所得の低い若者というより、高収入を得ている大人たち、すでに家も土地もある資金力のある高齢者などが多かったのは驚きでした。」
すでに豊かさを享受した人たちや安定している人たちだからこそ、もののもち方、暮らし方、働き方を考え直そうとしているのかもしれません。

 

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小屋で実際に暮らす人の事例をいくつか話してくれました。彼らが開発した「INSPIRATION」という小屋を購入した若者、友人4人が自分たちの車を売って、その資金で岐阜に土地とこの建物を買ったそうです。会社も職種も違う仲間の4家族があつまって週末を一緒に過ごします。全員は入りきらない小さな家にテントなどを持ち込んで半屋外暮らしです。ものの豊かさというより、自然の中に身を置いて気のあった仲間とたわいもない時間を共にし楽しんでいるそうです。

 

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他にもアメリカで、子供四人の6人家族の一家がスクールバスを改造して中で寝泊まり2ヶ月間かけて大陸横断したという話もありました。ご主人が仕事の転機に家族全員での旅行を企画し、学校も休ませて、バスの中で勉強を教え、家族が共に暮らす濃密な時間を手に入れました。この先子ども達が大人になったらできなくなるかもしれない。家族の絆を確認する旅に出たのだというのです。

 

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(出典元:BIG BLUE BUS TOUR)

 

それぞれ状況は違いますが、小屋や移動する家などを通して自分の暮らしを見つめ直し、家族、友人たちの関係性を再確認していこうということなのでしょう。自分でコントロールできるサイズの小さな家は暮らしを見つめ直すには程よいツールなのかもしれません。買えば済むという時代から、よりものや人に深く関わって暮らすことに関心が向かっているともいえそうです。

 

このウェブサイトのコミュニティには、小屋に興味を持ち、実際に小屋を作るプロジェクトチーム「小屋部」があります。YADOKARIコミュニティは今では3000名を超える人が登録し、活動は全国各地で行われています。毎週末どこかの地で様々な小屋が部員の手で作られているそうです。自分でものをつくるということがなかなかできない時代です。小屋をつくることで、ものづくりの達成感も味わえます。さらにプロセスを共有することで仲間の結束も強くなります。仕事も地域も違う仲間たちと生き方や働き方を語り合う場にもなるようです。

 

現在YADOKARIでは、「未来働き方会議」というコーナーも運営しています。このコーナーで取り上げる“これからの働き方”については次回また触れてみたいと思います。

 

写真提供: YADOKARI

 

YADOKARI株式会社
共同代表取締役 さわだいっせい / ウエスギセイタ
http://yadokari.net/